ホトケノザ

仏像を安置する座を仏座(ぶつざ・ほとけのざ)という。仏座には、たとえば須弥座や獅子座などその形式のヴァリエーションはさまざまあるが、蓮の花で象った「蓮華座」が一般的にイメージされるのではないだろうか。

 

ホトケノザは、葉の形を「蓮華座」に、葉の上に咲く花を仏に見立てたシソ科の植物である。春の七草にもホトケノザという草があるが、これはコオニタビラコ(キク科)のことであり、シソ科の本種は食べられないのだそうだ。

 

野草の名前(和名)の由来には、いくつかのパターンがあるが、多くがその野草に似ているもの(武具や動物、歴史上の人物、昔の生活用品など)が用いられており、現代から見るとそれら野草の名前は、そのまま中世や上代に通じる小径のように感じられる。それらが道端にある驚き。

 

ホトケノザは、3〜6月、本州〜沖縄の市街地、畦道などに咲いており、決して珍しいものではないだろう。以前、仲の良いある俳人の方とコンビニエンスストアに立ち寄った際、コンクリート敷の駐車場の本の片隅に一本の野草が生えていた。あまりにささやかであったため、私をはじめおそらく誰も気に留めなかったと思うが、その方は「あ、ホトケノザ......」と即座に反応していて、俳句というものが持っている命への敏感さ、古典への通路を見つけるの賢明さを切に感じたものだった。

 

少し用事を済ませてから今日も散歩に行こう。